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もり耳鼻咽喉科・アレルギー科クリニック





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    理念   院長経歴   慢性副鼻腔炎のはなし  日医ニュースより 

慢性副鼻腔炎のはなし

 「鼻」は、文字どおりの「鼻の穴(鼻腔)」と、それに隣接する多数かつ複雑な洞穴(「副鼻腔」)から構成されています。たとえば風邪や、アレルギーなどで、比較的空気に多く触れる「鼻腔」のみに炎症が生じたものを鼻炎、何らかの原因によって、炎症が副鼻腔まで及んでしまったものが「副鼻腔炎」です。

●副鼻腔炎と蓄膿症
 昔、日本人の医療状態や栄養状態がまだ悪かったころ、副鼻腔炎はほとんど感染性(細菌性)のものでした。患者さんはほとんど例外なく青ばなを出し、副鼻腔にはクリームのような膿が充満していることから、副鼻腔炎は「蓄膿症」と呼ばれていました。
 近年では、風邪などをひいても、ほとんどはすぐにお医者さんにかかって治療しますし、生活レベルも上がりましたので、昔のように「膿が充満」しているような副鼻腔炎はほとんど見かけなくなり、もっぱらアレルギーや、好酸球という白血球の一種が関与するような副鼻腔炎が主流になりました。したがって副鼻腔炎を「蓄膿症」と呼ぶことは、現在ではナンセンスともいえますが、患者さんにご説明する場合、ピンときていただけることが多いため、このように説明する医師は多いと思います。

●副鼻腔炎の症状
 鼻汁が中心です。アレルギーが合併していればくしゃみが、また悪化して「鼻茸」が大きくなったような場合、鼻閉が強くなります。「頭痛」や「集中力低下」はかなり有名な症状ですが、「最近の副鼻腔炎」では、意外に多くない印象です。

●小児の副鼻腔炎の大切な症状-「湿性の咳」と「中耳炎」
 小児の副鼻腔炎でとても大切なのは、上記の症状に加えて、「咳」(湿性の咳=たんが絡んだような咳)と「中耳炎」があるということです。
 人間の鼻の粘膜の表面には、繊毛というきわめて細かい「毛」の様なものが生えており、毎分600回も振動して、鼻粘膜についた外敵やゴミ、粘液などを掃除する働きをしています。この時、「ゴミ」は、前(鼻の穴方向)に排泄されるのではなく、後ろ(のど方向)に送られます。たとえば、正常の鼻の入り口に、砂糖水をつけてみますと、15分後くらいにのどで甘い味を感じます。
 副鼻腔炎のときの鼻汁もこのように後方(のど)に送られ(後鼻漏)処理されますが、小児では鼻や喉の空間に余裕がないなどの理由で、後鼻漏の刺激が咳を引き起こします。この鼻の最後部には、中耳との交通路(耳管)の入り口があり、小児ではこれが太く短いため、容易に急性中耳炎を起こしたり、滲出性中耳炎の原因になったりします。後鼻漏は、夜間など横になった状態で強くなりますので、湿性の咳も夜間にひどくなるのが一般的です。また、この鼻汁の一部は、気管の中にもはいる場合がありますので、細菌の感染が強くなった場合などには気管支炎や肺炎を合併することもあります。

 6歳以下の小児の副鼻腔炎の多くは、鼻汁とともに、たんが絡んだような咳が頑固につづきます。「鼻」と「せき」といえば、「かぜ」をもっともよく連想しますので、お母さんやお家の方は、「風邪がいつまでも治らない」「しょっちゅう風邪をひく」という認識でいらっしゃる場合が多く見られます。一般に「風邪=急性上気道炎」は、数日ないし1週間で通常よくなります。2週間以上続く鼻汁とたんが絡んだような咳が続く場合は、もはや「急性」上気道炎、つまり風邪とはいえず、「慢性副鼻腔炎」を疑う必要があります。
 さらに、副鼻腔炎の「たんが絡んだような咳」のとき、とくに幼児では、胸の音を聴診器で聴くと、ゼロゼロとした「喘息のような音」がきこえることから、小児科の先生の診察を受けられますと、「喘息様気管支炎」と説明されることがあります。これは「喘息」とは似て異なるものです(喘息は、せきが出る病気ではなく、気管支の壁が分厚くなるために息が吐き出せなくなる病気)。この病名は、アメリカやヨーロッパの教科書には記載はなく、日本の主に小児科領域で使われる独特の症候的病名です。小児科でもアレルギーや喘息を専門に扱う施設では基本的にこの病名は用いません。
 実は「喘息様気管支炎」の8割以上は、正体は「副鼻腔炎」であるようです。実際そのほとんどに副鼻腔炎があり、治療によって鼻汁をとめ、副鼻腔炎が治れば、咳もほとんど止まっていきます。逆に、通常の咳止めや気管支拡張薬は、ほとんど効かないか、効いても一時的ですぐもとに戻ってしまう場合が多いようです。もちろん、実際に喘息をお持ちのお子さんに後鼻漏がおこった場合、その刺激で喘息発作が誘発されてしまうこともあります。
 急に耳が痛くなる「急性中耳炎」は、前に述べたような理由で、副鼻腔炎がベースにある場合が多く、鼻の検査と治療が必要です。また、鼓膜の奥に汁がたまる滲出性中耳炎が隠れている場合も少なくありません。副鼻腔炎に合併した滲出性中耳炎は、副鼻腔炎の治療が大前提になります。

●副鼻腔炎の治療
 鼻の処置・吸入(ネブライザー)と、薬物療法が基本です。

★ 副鼻腔炎の処置はなぜ必要か?
副鼻腔の出口は、中鼻道というとても狭い隙間です。副鼻腔炎の鼻汁は、この隙間を通って、副鼻腔から鼻腔に流れ出しています。耳鼻咽喉科のクリニックでは、医師は鼻の中に光をいれて観察しながら、まず何種類かのスプレーを鼻の中に当てると思います。これは、鼻粘膜を収縮させ、この「中鼻道」を広くするものです。さらに、この部分の鼻汁をきれいに吸い取ったあと、細かい霧状になった薬を吸入する治療(ネブライザー)を行います。こうすることで、迷路状の副鼻腔のすみずみまで、薬液が到達しやすくなり、よりよい治療効果が期待できます。
逆に、このような処置を十分しませんと、いくら吸入をしたりくすりを飲んでも、効果は減ってしまいます。
★副鼻腔炎の薬物療法-マクロライド系抗生剤少量長期療法
副鼻腔炎は、とても治りにくい病気であるというイメージがありますが、近年、たいへんよく治るようになりました。これは、「マクロライド系」という抗生物質(エリスロマイシン、クラリシッド、ルリッドなど)に、鼻や耳、気管支などの炎症をやわらげたり、鼻汁や痰を掃除したり出にくくする作用が発見され、広く使用されるようになったからです。この効果は、通常細菌をやっつけるために使用する量よりもかなり少ない量でも認められること、この抗生物質では抑えることの出来ないはずのばい菌による副鼻腔炎をもよくすることから、本来の「抗菌作用」とは全く別の(今まではわからなかった)作用によるものと考えられています。
慢性の副鼻腔炎や中耳炎、気管支炎では、このマクロライド系抗生剤を、少ない量で、一般的にはある程度の長期間(約3ヶ月が一つの目安)用いて治療します。鼻汁が多い時や、アレルギーがあるときには、粘液溶解剤や抗アレルギー剤、点鼻薬などを併用することもあります。
「抗生剤」を長期間用いると、「効きにくくなる」ことをとても心配される方がしばしばいらっしゃいます。正確に申しますと、「効きにくくなる」というよりも、使った抗生剤以外の多数の抗生剤に対して効き目のない細菌を誘導してしまう(多剤耐性誘導)ということです。不用意に長期間抗生剤を用いますと、生じる場合があり、注意が必要です。しかしながら、「マクロライド系抗生剤」の少量長期療法では、多剤耐性誘導はされないことがわかっています。これ以外の副作用もきわめて少なく、長期間の服用でもたいへん安全な薬であることがわかっていますので、どうぞ安心して治療を受けて下さい。
 「副鼻腔炎」は、症状がなくなったイコール治った、ではありません。症状がなくなっても、副鼻腔の炎症がなくなる(レントゲンの影がきれいになる)までにはまだまだ時間がかかり、慢性の場合であれば、完治までには早くて3ヶ月近くを要します。症状が消失しても医師の指示を守り、完治まできちんと治療を受けて下さい。
 
★ 副鼻腔炎の手術療法
 一昔前まで、副鼻腔炎の手術は、歯グキを切って頬の骨(上顎骨)を削って開窓し、副鼻腔粘膜を掃除するというものでした。病変部を取り除いてしまうことから副鼻腔根本術ともよばれていますが、たいへん苦痛を伴うものでした。
 一方、現在では「根本術」はほとんど行われなくなり、鼻の穴から内視鏡を用いながら、副鼻腔への道を十分に確保させて副鼻腔の換気と排泄促進(ドレナージといいます)をはかってやるとともに、粘膜は除去せずに、正常の状態に回復できるよう道筋をつけてやる、という手術が行われます(内視鏡下鼻内副鼻腔手術、ESS)。
 以前はこのような粘膜温存の手術では効果がないと考えられていたのですが、技術の進歩と、何よりも前にも述べた「マクロライド療法」が確立されたことが大きく寄与していると考えられます。
 内視鏡下鼻内副鼻腔手術は、苦痛の面で患者さまへの負担がすくないだけでなく、両側であっても手術が1回ですみ(根本術では、両側の場合まず片側を行い、1週後にもう片側をしていた)入院期間が短くてすむこと、手術そのものに要する時間も短くすむこと、術後の治りも優れていること、頬のしびれなどの後遺症もないことなど、多くの利点があります。
 一方、内視鏡下鼻内副鼻腔手術は、病変を根治させる手術ではないため、手術そのものももちろん大切ですが、手術後(退院後)のフォローと手入れがとても大切になります。主治医の先生がいいというまで、定期的に通院し、マクロライド療法を中心とした治療を続ける必要があり、手術の成否はこの術後の治療にかかっているといっても過言ではありません。
 鼻内に鼻茸が出来てしまったものなど、一定以上に進んでしまった慢性副鼻腔炎では、薬剤での治療効果は望めず、手術が適応になります。このような場合で、頑固な鼻閉や鼻汁のある方は、内視鏡下鼻内副鼻腔手術を受けられることをおすすめします。

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